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建物の外壁構成はコンクリート打放しとマットな塗装仕上げでプライマリー・ボックスを基本形に置いた6階建の共同住宅である。幅員6m余の前面道路に接し、低層と上層、東面の各階エントランスホール部分をコンパネベニヤと小幅杉板で使い分けた粗なコンクリート打放しとし、中間三層は質感を抑えた塗装仕上げで構成したシンプルなプロポーションである。
建物の核(中央部)は天空からの陽射しと風を各室内へと導き込むために、垂直に伸びたライトウェル(光井戸)を設えた。コンクリートボックスの核に光と風を濾過して引き込み、居住者に日常生活を通して時間や季節の移ろい、刻々と変化する光景を実感させる役割を担っている。
隣地擁壁(RC杉小幅板/凸凹状のアルミルーバー)と外壁によってフレーミングされた間隙からのアプローチは、陽光溢れる水盤と水音に満たされ、更に涼風が吹き抜ける空間は、居住者の心を躍らせエントランスホールへと導く。そこは沖縄の原風景を感じながら抽象的モダンな余白の美意識が表現された場となっている。
アプローチから各階廊下の床仕上げは、粗肌の石灰岩で目地が目立たぬように処理され、本来の規範寸法仕上げとしての表現をできる限り減衰させ、遠目には一枚の石に映るように張られた。また石灰岩で構築されたヒンプン前にはアダン、蘇鉄など野趣に富んだ庭が設らえられた。
建物内は1階が駐車場、各階を結ぶ階段室及びエレベーターホール、2階〜4階が賃貸住居、5、6階がクライアントの住居スペースである。5階の住居部分では4m弱の一枚の大開口が屋外空間/テラスと室内空間/LDKを一体化させ、人的移動、海側のロケーションへと視線を向かわせる。更に一枚の大開口によって「ウチ」と「ソト」の境界線は曖昧さが増幅され、より豊かな空間が組織されている。
東側にはサニタリースペースがシンプルに纏められ、対面キッチン/ 2500×1000から連続する石張りのカウンターテーブル(キャンティの長さ1800)は使い勝手を考慮した無柱を可能にした造りとなっている。
最上階はクライアントの寝室/書斎及びミニバーが配された。屋外はタイル床仕上げのアウトドアリビングと、三段/450mm上がったデッキ張りのもう一つのアウトドアリビングがある。そこは植生された緑とアウトドアソファー、エコスマートファイヤーが設置され、昼間は緑によって遮られた柔らかな陽射しの中、読書に耽り、更には夜の帳が下りると火の揺らめく空間となる。
建物はラーメン構造であり、各階の柱は700×700もあるために柱がもたらす空間の制限、アルコーブの積極的な活用を常に意識した。ある場所では収納であり、また飾り棚/カウンターであり、空白のスペースを最小限に抑える工夫がなされた。
海へ向けられたテラスでは、水色で彩られたモザイクタイルで囲われた水盤から微かな音色が奏でられ、爽やかな涼風をリビング/ダイニングキッチンへと導く。更に90度に曲げられて並置された花壇は、緑と季節の変化に伴った色取り取りの花々が咲き乱れ、視線を楽しませてくれる。
5階、6階及び屋上の屋外テラスは、立体的な回遊動線で内部空間と外部の自然との連続性や親和性が重層プランによって生み出された。そこでは友人や同僚、仲間達が異なる風景を楽しみながらアクテビティに語り合い、中高層テラスでしか獲得できない最適で快適な豊かな居住空間が実現、提案できたのではないかと考えている。